29歳の水木しげる

大家業の傍ら、副業として下宿人の紹介で紙芝居制作を始める。
水木と同じ変わり者ばかりが入居してきたため、家賃収入は捗捗しくなかった。大家業が中々軌道に乗らず副業を探していた所、紙芝居作家の弟子をしているという青年がアパートに入居した。

一度は諦めた絵に対する熱意もあって、その青年から紹介してもらった紙芝居の貸元に手製の紙芝居を持ち込んで回った。評価は今ひとつだったが、林画劇社という貸元で演じ手の纏め役をしていた活弁士の鈴木勝丸が水木の作品を気に入り、同社の紙芝居作家として採用された。夢にまで見た絵に係る仕事に付いたが紙芝居業は非常に薄給で、ましてや実績のない無名の新人作家にはまともな代金は支払われなかった。